2008年度作品。イスラエル=ドイツ=フランス=アメリカ=フィンランド=スイス=ベルギー=オーストラリア映画。
2006年のイスラエル。映画監督のアリは、友人のボアズから26匹の犬に追いかけられる悪夢の話を打ち明けられる。若い頃に従軍したレバノン戦争の後遺症だとボアズは言うが、アリにはなぜか当時の記憶がない。不思議に思ったアリは、かつての戦友らを訪ね歩き、自分がその時何をしていたかを探る旅に出る。やがてアリは、ベイルートを占拠した際に起きた「住民虐殺事件」の日、自分がそこにいたことを知る…。(戦場でワルツを - goo 映画より)
監督はアリ・フォルマン。
いかにもアート系の映画だな、というのが第一印象である。
トーンが淡々としていてまったりとしているし、会話の間はどことなく思わせぶり。そしてつくり手は、画面の中に流れる雰囲気を大事にしているように感じる。
それをアート系映画的と言うべきか、反論はあるだろうけれど、ともかく僕はそう感じる。
本作はアニメーションではあるけれど、基本的には実写にしても違和感がないくらいに、リアリズムに徹してつくられているので、よけいそう感じるのかもしれない。
それはそれで味があることは確かだとは思う。けど、本作の場合は、それがゆえに、少し淡々としすぎている。
内容自体は別に悪くないし、つまらなくもない。だけど、映画に流れる淡々としたトーンのために、ちょっと退屈に映った。
まあ趣味の問題と言われればそれまでだけど。
何かケチをつけているみたいだが、訴えているテーマ性自体は、非常にすばらしい。
特にラストの映像の使い方は効果的だ。
多分ただあの映像を見せられただけでは、残酷だと思っても強く心に残ることはなかったかもしれない。
それは映画の中のセリフではないが、カメラを通して見るため、リアリティがどうしても損なわれるからだ。
しかし本編をアニメにすることで、映像の生々しさがより際立つものになってきている。
そのあたりの演出は、一発ネタではあるけれど、鮮やかな発想だ。
そのラストの映像にあるのは、人間の、生々しいほどリアルな死である。
それは現実に虐殺が行なわれたという確かな証だ。
そのことを強く訴えるラストシーンには社会的な使命感にあふれている。
つくり手の誠意と心意気が伝わってくるようだ。
物語そのものは、個人的にはあまり評価しない。
しかしつくり手の社会正義を貫こうとする思いが伝わってきて、そのあたりは印象深い。
戦争というものの残酷さについて、思いを致すことができる、そんな作品だ。
評価:★★★(満点は★★★★★)
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